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  中学校の講話
 
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母の教え


 今日は私の母の話をします。
 母は、女学校卒業後、某企業に勤務し、結婚してからも仕事を辞めることなく定年まで働きながら、私を含め男児三人を育てました。家族のためにいつも忙しく動き回っていた母の姿が今も思い出されます。
 思想家の安岡正篤(やすおかまさひろ)氏は「世に母の徳ほど尊く懐かしいものはあるまい。母は子を生み、子を育て、子を教え、苦しみを厭わず、与えて報を思わず、子と共に憂え、子と共に喜び、我あるを知らぬ」とおっしゃいましたが、母を懐かしむとき、この言葉が母の姿と重なり、母に対する感謝の気持ちでいっぱいになります。

 子どものころ、母は「人を憎むな、腹を立てるな、くよくよするな、そして楽しく過ごしなさい」という言葉を常に私に教え諭してくれるとともに、母自身の後ろ姿で示してくれました。この母の言葉は私の心に刷り込まれ、いつしか私のバックボーンとなりました。人と接するうえで、また、人生を送るうえで、この言葉をいつも心に留めながら過ごしてきたことで、自分なりに大過なく人生を送れていると思います。母のおかげです。

 母が亡くなってからのことです。
 ある方からいただいた『ゲーテ詩集』(高橋健二訳 新潮文庫)を読んでいたら、「処世のおきて」というタイトルの詩に出会い驚きを覚えました。そこには「気持ちよい生活を作ろうと思ったら/済んだことをくよくよせぬこと/めったに腹を立てぬこと/いつも現在を楽しむこと/とりわけ、人を憎まぬこと/未来を神にまかせること」と、母の教えとほぼ同じことが書かれていたのです。
 この詩に接し、一行一行噛みしめながら読んだとき、ゲーテの詩など知るよしもない母が、まさに「人生の大則」を教え続けてくれていたのだと改めて感謝しました。
 母の恩に報いるためにも、今後ともこの言葉を心に抱き続けながら、実践を心がけていかなければならないと思っています。

(水元重夫)



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